[Squeak-ja: 2769] Re: 質問: Croquet を使ったときに「頭痛、吐き気」を催すことがありますか?

"土本 (Florian) 強 "土本 (Florian) 強
2005年 12月 13日 (火) 11:44:41 JST


 こんにちは。土本( Florian )です。
 Croquetではなく、一般的なFirst Parson(一人称視点)の3Dウォークスルーに
関する内容として、知っている知識をお答えします。

#土本の本業はゲーム屋です。Croquetはあまり詳しくありません。大好きです
#が。

メール「[Squeak-ja: 2767] 質問: Croquet を使ったときに「頭痛、吐き気」
を催すことがありますか?」(2005/12/13 10:31) に於いて
「Eiichiro Ito」 語りて曰く、

Eiichiro> Q. Croquetを使った学生に頭痛や吐き気の症状が現れるといった事例は
Eiichiro>  ありますか?また、その対策はありますか?
Eiichiro> 
Eiichiro> Squeakや関連の技術について紹介したり体験する実習の授業を行っており、
Eiichiro> ちょうどCroquetを扱っているのですが、ここである問題が起こっています。
Eiichiro> 
Eiichiro> 学生の一人が「気持ちが悪い」ということで、授業の継続が困難だと言う
Eiichiro> のです。配布したCroquetをインストールして実行したところで、吐き気が
Eiichiro> 起こり、その後も頭痛が2日ほど止まらなくなってしまったそうなのです。
Eiichiro> 
Eiichiro> この学生は以前にも3Dゲームで同様の経験をしたらしく、それ以降は避けて
Eiichiro> きたそうです。今日は手元のパソコンを使わず、プロジェクターに小さく映
Eiichiro> した画面を見るように勧めたのですが、恐怖でなかなか見れなかったそうで
Eiichiro> す。
Eiichiro> 
Eiichiro> 授業としては何とか問題なく進められそうなのですが、この学生も可愛そうな
Eiichiro> ので何とか原因や対策を考えたいと思います。もちろん医者に行って診断する
Eiichiro> のもできますが、検査にもいくばくかの時間やお金がかかりますし、深刻さや
Eiichiro> 程度、あるいは「よく見られる症状なのか」など情報を得たいと思っています。
Eiichiro> 
Eiichiro> もし、Croquet(や類似のシステム)を使った授業やイベントなどを行われた
Eiichiro> 方で、同様の症状に会われた方がいらっしゃればそのときの状況や対策をお知
Eiichiro> らせ願えませんでしょうか?また、医学的な呼称などご存じの方もいらっしゃ
Eiichiro> れば教えていただけませんでしょうか?

 俗に「3D酔い」「映像酔い」と呼ばれる現象です。正式な医学的名称は不明で
す。

	http://e-words.jp/w/3DE98594E38184.html

 メカニズムとしては乗り物酔いと同じ物らしく、平衡感覚などによって補償さ
れるべき視野の変化が、予想補償範囲とずれている(そもそも映像なので平衡感
覚は変わっていない)事による違和感が蓄積して「酔い」の症状が引き起こされ
るようです。
 ゲーム、エンターテインメント映像の世界では一般的なものとして考えられて
おり、明確なデータは示せませんが、実際の所「3D酔い」自体は結構な割合で引
き起こされる人がいるようです。

	http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2003/pr20031218/pr20031218.html#b

 症状自体は、単なる体質による物であり、この症状による永続的で深刻な身体
的影響は今のところないようです。
 原因の根本は乗り物酔いと同様ですので、予防策としては乗り物酔いと似た薬
が効くと思われます。


 他の方法論としては以下が考えられます。

・当人がインタラクティビティとの関連づけを行う
	自らの操作が映像に反映される場合の方が、操作とは無関係に映像が変
化する物に比べて平衡感覚の錯覚による補償が行われる分症状は軽くなります。
具体的には、自ら慣れている操作方法によって操作してもらう必要があります
(Croquetにおいては、現実的ではありませんが)。
	車に乗っているだけでは乗り物酔いをしますが、運転している人が乗り
物酔いをあまりしないのと同様です。

・現実感を薄くする
	現実世界と近い状態での補償が行われなければ、ある程度症状は軽くな
ります。具体的には、視野角を狭くし、小さいディスプレイで見てもらう必要が
あります。
	ただし、映像に没頭してしまうと見かけの視野角は狭くなる(ディスプ
レイしか見えなくなる)ので、「注目しない」必要があります。もっとも、教育
の現場で「真剣に見るな」というオーダーは学生に対して失礼だとは思いますし、
前項の「インタラクティビティとの関連づけ」に矛盾しますが……。


 「3D酔い」に対する対策では、現在以下のような物が存在します。

	http://pcweb.mycom.co.jp/articles/2005/08/03/siggraph/

 もちろん、一般に使用できる物ではありませんが、「3D酔い」のメカニズムは
つかめると思います。


 ゲームの世界では「3D酔い」は避けられないものとして今のところ考えられて
います。アメリカ市場向けのゲームのほとんどがFirst Parsonであることを考え
ると、ユーザーの側へ「慣れ」を要求しているものと思われます。
 このため、一般向けの、多人数に対するイベントにおいて同様の症状が起きる
ことを考えると、あらかじめ身体的リスクを告知する以外の方法がないのではな
いかと思われます。


 表面部分のみで、なおかつあまり建設的な意見の提示が出来ませんでしたが、
私の知っている知識は以上です。

 では、失礼します。

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土本( Florian )強/florian @ seagreen.ocn.ne.jp
Florian's Neo Pages http://www.cise.co.jp/%7eflorian/
/* 朝には消えたあの歌声をいつまでも聞いてた
   僕らが残したあの足跡をいつまでも追ってた */
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